昨年末グーグルがサイトの評価について新しい評価基準を公表しました。
「E-E-A-T」と呼ばれ、従来の基準(E-A-T)に一つ「E」を追加した形になります。

ちなみに「E-E-A-T」は「Double E A T」と読むのが良いようです。

追加された「E」とは何?

今回新たに追加された「E」は「Experience」で、日本語なら「経験」という事ですね。

この「経験」が追加された背景には、従来からある指標、中でも「A(Authoritativeness)」つまり「権威性」だけでは不十分だと考えられたからだと思われます。
「E-E-A-T」を打ち出した新しいGoogleの「検索品質評価ガイドライン(英語)」では、「Experience」と「Experts」で、同じトピックでも異なる内容・異なる用途の検索意図が考えられていることが示されています。

一例を挙げると、地方選挙の投票について検索する場合、

・選挙に投票することの重要性を説く一般の人のSNS投稿
初めて選挙に臨み、選挙に意味があるのか疑問に思っている場合などに参考になります。

・投票権(投票する資格)や必要な準備についての公的情報
原文は英語のため米国の事情なので、日本に置き換えると、投票できる年齢やどこの地方が投票先になるのかの情報を調べたいときでしょうか。
引っ越しや住民票を移動したタイミングと選挙実施時期によっては、旧住所が選挙区になるかも知れません。

といった解説が行われています。

webには権威が無くても、有用な情報が存在するため、新しい軸を追加したという形でしょうか。
医療情報の関係でシロウト記事を排除しようとしてやり過ぎてしまい、他の分野で副作用が目立ったという判断なのかもしれません。
ただし、一番重要視しているのは「T」つまり「Trust(信頼性:旧 Trustworthiness)」です。
ただ、以前は信頼性の条件として権威性が必要とされていましたが、その説明が今回無くなったとされていますので、権威性偏重が改められたのかもしれません。

この事は、一般の方が行う(または一般の方のサイトに専門家が行う)SEOにある光明が見えたかも知れません。

例えば、ニッチ分野の商品を販売しているサイトを考えます。

ニッチ分野のため、多くの人に知られる専門家はおらず、むしろ販売者が専門家です。
ですが、グーグルに専門家と認められなければ、SEO的には専門家ではありません

業界の有名人とか、大学教授などの誰が見ても権威がある人または、多くのサイトから「この人に聞け」といった感じで紹介されたりしていなければ、専門家とは認められないでしょう。
ですが、ニッチでは多くの人から紹介される事は難しい。
だからと言って、自分で勝手に作った「資格」を名乗ったり、会員が自分しかいない協会を作って「会長」を名乗っても、効果は無いものと思われます。

それでも、長く続け、商品に関して多くの知見を継続的に追加発信しつづければ、経験があると判断されるかも知れません。

権威と経験

今回登場の「E-E-A-T」は主に「YMYL※」と呼ばれるものに大きく影響しますが、それ以外でも影響があるかも知れません。

※情報が信頼できない場合に有害となるトピック

たとえば、趣味の分野などはYMYLでは無い事が一般的ですね。

とりあえず、この「E-E-A-T」の2つのEについて模型(プラモデル)で考えてみましょう。

・権威のある情報(Expertise)
メーカーや大手ニュースサイト、雑誌社の模型誌の公式サイトに掲載されているニュースリリースや、有名モデラーによる商品評価記事、制作テクニック記事など。

・経験のある情報(Experience)
個人サイトやSNSで発信されている制作記事、キット評、購入報告など。

といった事が考えられます。
プロやセミプロのモデラーによる記事なんかは、その方の有名具合(どの程度関連界隈で有名か)によって、いずれかに分かれるでしょう。

これまでは個人の発信は権威が無いため、低く扱われていましたが、今後は多くの注目を集める(バズった)記事なんかは、より高い評価を得られるかもしれません

模型なら、メーカーの発信だけでなく、実際に購入して制作した(=経験した)記事の重要性が考慮されると考えられます。

どうやって E-E-A-T の各項目を改善するのか

権威性を高める、経験の多さを示すと言っても、どうすれば良いでしょうか。
サイトに「私は**を20年やっています」と書いても、ダメです。 それで経験が多いと判断するほどグーグルのアルゴリズムは簡単ではありません。

話を具体的にするため、各項目について先ほどの模型を題材に示してみましょう。

E(Experience)「経験」

経験が長い事をアピールするのは「モデラー歴30年」とかいう文章ではありません。

20年前から模型に関する個人サイトを運営していると言った、実績です。
もちろん、今作ったサイトに「2003年開設」などといった嘘を記すなど論外です。
グーグルが認知している必要がありますね。

当然の事ながら、20年前に作っても、20年間放置していたのでは経験として評価されません。
継続してコンテンツをアップデートし、新しい情報を追加していなければなりません。

これから参入したい場合には難しいかもしれませんが、継続は力と考えましょう。
サイト自体が若くても、コンテンツ内容が歳月の重みが判るものなら、もしかしたら評価されるかも知れません。 どちらかといえば、次の「専門性」に貢献しそうですが。

E(Expertise)「専門性」

特定の分野における専門性があると判断されるには、専門という言葉から連想される「狭く深い知識」とは少し方向性が違います。
逆に、関連する情報を網羅することが良いとされています。

模型なら、製品レビュー、各種工作テクニック、各種塗装テクニック、撮影テクニック、道具の解説、保管方法、展示会場への運搬方法、展示会情報、注目の新製品情報、同じアイテムのメーカーごとの違いといった横断的レビュー、古いキットの再生方法、そして現物の解説など、多岐にわたる記事を扱う事で専門性があると判断されやすくなるでしょう。

なお、ここで言う「撮影テクニック」は購入したキットの箱や完成した模型を撮影するテクニックです。人物写真や風景写真のテクニックについて話をしても、専門性という観点からは逆効果なので、軸を忘れないようにしましょう。

A(Authoritativeness)「権威性」

別に模型誌のライターになったり、模型メーカーの広報部長になる必要はありません。
多くの人から「この人に聞けばわかる」「この人のいう事なら信じていい」「この人の新しい作品を見たい」と思われる事が権威性に繋がります

信頼できる記事・人々が求める記事を継続して提供し、多くの人がリンクしたり引用したりして紹介するようになれば、グーグルは権威性があると判断するようになるでしょう。

T(Trust)「信頼性」

記事が信頼に値するかどうか、それをグーグルはどうやって判断するでしょうか。
グーグルの判断は人間が行うものではありませんので、ロジックで考える必要があります。

たとえば、統計なら異常値を除いて処理します。
記事も同じだと考えられます。

レビューなら、他の人のレビューとあまりにかけ離れていると、信頼性が低いと判断されるでしょう。
アフィリエイトで売りたいからと、無闇に褒めちぎって、他の人のレビューとは違い過ぎる場合などが該当します。
他の人がリサーチミスなど難点として指摘している部分を、「工作技術を磨くのに好ましい」とか、「資料を当たるきっかけになる」など、無理やり肯定的に書いたりするのは止めましょう。

逆に個人的に嫌いなメーカーだからと、中傷レベルの評価をした場合でも、結果は同じですね。

だからと言って、他の人の評価を平均した記事を書いても、グーグルに評価されず埋もれてしまうでしょう。 どこにでもある情報は価値のない情報ですから。
邪心を持たずに、実際に自分が感じたことを元にしたオリジナルの記事を書くのが一番でしょう。 余程の事が無い限り、極端な記事にはならないはずです。

なぜグーグルは経験を重視することにしたのか

コンテンツの評価指標の一つにユーザーの滞在時間があります。
これが短いコンテンツは評価が下がってしまいます。

では、どういうコンテンツの滞在時間が短いのか。
 文章が短い? 文章が読みにくい?
それらも当然ありますが、今回グーグルの新指標により新たな視点が見えてきました。
それは
 どこかで見たことがある
ですね。

「同じ事しか書いてないやん」と思われて、ブラウザバックされてしまうという話です。

経験を元にしたコンテンツ作りを勧めるのは、経験は個人個人で異なるため、経験を反映するような作り方をすれば、コンテンツの独自性が高まります
結果、「あまり見たことが無い」ものとなり、滞在時間が延びると言う訳です。

このことから、グーグルは経験を重視することにしたものと思われます。

最後に

今回取り上げた「E-E-A-T」はグーグルのシステムの動作を解説しているものではありません。
検索結果を評価する「人」が審査する時に参照するガイドラインです。
なので、現時点での「検索結果の変動」を説明するものではありません。

ただし、プログラマーはその審査結果を元にシステムを改修するので、いずれシステムの動作に反映されて行く事になります。
なので、「人間にしかわからない事をシステムが理解する訳はない」とか考えてはいけません。

「E-E-A-T」のガイドラインを満たしていないという報告が出るたび、改善方法が考案され、システムが更新される。
ある日突然慌てる事の無いように、コンテンツを作る人は、今のうちに「E-E-A-T」に従う事を頭に入れたコンテンツ作りを心掛けると良いでしょう。